ネタバレあり 映画『海よりもまだ深く』感想

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今回は是枝裕和監督の映画『海よりもまだ深く』の感想!

あなたは「海よりもまだ深く人を愛した事」はありますか?難しい質問ですよね。

何か起きそうで映画的な派手な事は何も起きない清瀬の団地を中心とした日常を中心に描いた映画!それでいて「人生こんなはずじゃなかった」的な暮らしを送っている僕らに少し光を与えてくれる不思議な作品です。

早速、僕の感じた感想を書き連ねてみようと思います。



映画『海よりもまだ深く』感想

人生ままならないよね、そんな全ての人に見てほしい!「清瀬」を知っている人も知らない人も必見!

で、この映画はタイトルに「海」と付きますが海には行かず、海のシーンは出てきません。海の要素は団地の中にタコの滑り台があるぐらいでしょうか?最後の方でタコの滑り台の中で台風をやり過ごすシーンが出てくるんですがそれが水っぽく海っぽいと言えば海っぽい。

映画のタイトルは、劇中にふいにラジオから聞こえてくるテレサ・テンの『別れの予感』という曲の「海よりもまだ深く 空よりもまだ青く」この歌詞から来ているっぽいですね。

『別れの予感』という曲のタイトル…別れって寂しいですね、しかし映画の中で淑子(樹木希林)は「幸せってのは何かをあきらめないと手にできない」と言います。難しい言葉です。未熟な僕には、わからない!

何もわからない僕の、うまくいかないどこにでもある人生でも、愛とは?生きるとは?夢とは?を「そのままの中途半端な形で少し受け入れようか」と思う事ができる素晴らしい映画だと思います。

「人生こんなはずじゃなかった」よね。

ちなみにタコの滑り台なんですが、少し前に子供が滑り台から落っこちたらしくて現在は立ち入り禁止のテープが貼られて使用されていない。時代は流れていくのに取り残された団地とタコの滑り台、こんなはずじゃなかったよね。世界はひょっとしたら巨大な「こんなはずじゃなかった」を生み出す装置かもしれない。

「こんなはずじゃなかった」という思いをそれぞれに抱え、二言目には「お金」という登場人物たち、したたかに淡々と生きていきます。そんな姿に共感したり、もっと上手に生きろよ、って思ったり。まあ、これが人生なんだよ、この人生を生きるしかないんですよ、ホント。

主人公の良多(阿部寛)がとにかくダメ人間でしがない作家崩れで今はパッとしない探偵をやっていて、ギャンブル好きで元嫁の響子(真木よう子)と一人息子に未練がある。良多を始め、その母、姉、元嫁もそれぞれに「なんだかなぁ」って感じで生きている。阿部寛ってイケメンですが、ダメ人間をやってもその濃い顔がなんともダメな感じで素晴らしい役者さんです。

 

まったく何もかもが「ただ春の夜の夢のごとし」ですね。僕たちって、はかない。人生も団地も輝いている時のなんて短い事!すべて風のように右から左にただ移動しているだけのようです。

それでも映画の最後に台風が吹き抜けた後、何か主人公の人生が好転したわけでも無いんですが清々しい気分になれます。台風もただ右から左に流れていく。特別、勇気づけられるような劇的なシーンもありません。でも、どうにもならない人生かもしれないけど生きてりゃまだ可能性はあるよなって思わせてくれる何かがあります。

実際、人生がどうなるかは誰にもわからない。重要なのは、いつか夢が叶うかもしれないって思って生きていくことってそんな風な事を50歳ほどの主人公の良多も最後の方で言ってます。年を取り、後悔ばかりの人生だけど、それでも夢を見続ける、それが大事だし、結果じゃないんだって、そんなメッセージが僕の背中をそっと押してくれます。

というわけで注意としては「人生思い通りだなぁ!最高だぜ」っていう人には、この映画は何も起きない謎の日常、団地を取り巻く普通の人々の物語だと思います。なぜ是枝監督のような何かを成しえる人がこんな憂いを持った人々の人生を描けるのかは不思議です。

ちなみに映画の舞台の清瀬駅や旭が丘団地なんかは実際に是枝監督の育った場所だったらしく、冒頭で主人公の良多(阿部寛)が母親の住む旭が丘団地に電車に乗って向かうのですが、このシーンがホントになんでもない!普通!少し間の抜けた音楽とその普通っぽさが、なんだか「最後まで観よう」って気にさせてくれます。是枝監督も子供の頃、このなんでもない風景を何度も眺めたんでしょうね、なんだか良いんですよね。こんな普通の風景を魅力的に仕上げたのはお見事!


おまけに清瀬駅っていうのもなんだか「あれ」だよね。で、この映画では「あれ」っていうセリフがよく出てくるんですよね。この気の利かない「あれ」っていうセリフがまたいい味出しています。映画のセリフであえて言わせることで、肩の力が抜けた日常がうまく描いてます。

決定的な事は起こりそうで起きない、ただ離婚した夫婦と、その子供とおばあちゃんが団地で台風をやり過ごす映画です。そういった映画を味わい深く、しんみりさせてくれる是枝監督ってすごい!最後に台風は過ぎて何かうっとおしいものを吹き飛ばしたような青空、そしてまた会う約束。それだけで良いんですよ、あとは生きてれば。そんなもんだよね、人生って!

男って遠くばかり見るよね。

僕が心に残った言葉は、夜中に起きて良多と淑子(樹木希林)が話す、淑子の言葉です。

なんで男は今を愛せないのかね。いつまでも失くしたもの追いかけたり、叶わない夢見たり。そんなことしてたら毎日楽しくないでしょ。

本当にそうなんですよね。男女の違いの表現で「あの看板」って指さすと女性は手前からその看板を探し、男は遠くから看板を探すって話があるけど、ホント男って遠くばっかり見てピントがずれがちだよね。

女性になったことないからわからないけどなんとなく女性が幸せそうなのって「今を見てる」ってところにヒントがあるかもしれませんね。現実的なんですな。まあ遠くばかり見ている男だから宇宙ロケットを飛ばすなんて事もあるかもしれませんけど。男女というのは根本的に逆の性質を持っていて、そこにひかれあい、そして幻滅する。まあその繰り返しかもしれませんね、よくわかりませんけど。

女優 樹木希林の境目の演技。

さえない阿部寛も、普通にしててもやっぱり綺麗で色気のある元嫁役の真木よう子、そしてやはりなんだか凄い樹木希林。今更ですが、この映画で初めて樹木希林の凄さがわかったような気がしました。演技なのか素なのかちょうどその境目みたいな演技するんですよね。あの世とこの世の中間のような演技。やはりすごい役者さんだな、と思いました。観ているこっちもよくわからなくなるんですよね、ホントにフィクションだよねって。

阿部寛のさえない役もなんだか叱りたくなるぐらいすごい演技ですけどね!ちゃんとせえよ!

と、いうわけで「人生こんなはずじゃなかった」という方、それでいて背中を押してもらいたい方、必見の映画だと思います。生きている事、前を向く事、それだけに価値があるんですよ、きっと。まあ、完璧な人生なんかありません。刹那の中、どう歩んでいくか、そんな事をゆっくり考える事のできる映画のぜいたくな2時間だと思います。


最後まで読んでいただきありがとうございました。皆様にたくさん良い事が起きますように。ではまた!

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