【ネタバレあり】宮部みゆき先生のSF短編に入門!『さよならの儀式』感想

さよならの儀式サムネイル本、メディア

今回は日本が誇る大作家、宮部みゆき先生の『さよならの儀式』!


僕は宮部先生の長編を未読という不勉強っぷりですが、そんな感じの感想となっております!

まずこの本、長編と思って読み進めていて一話目の『母の法律』を読んだ後に「あれっ?」と思い、短編小説が8編ある事に気づきました。表紙に書いておいてよ!もう!

で、読んだ後に河出書房新書さんのHPを見てみると解説に宮部先生が「ちゃんとSF」を書こうと思った。そんな事が書いてありました。もう先に言っておくれよ!道理でなんか物語の世界観を理解するのに骨が折れる短編ばかりだなと思ったよ!

正直、難しいところも多くて何度か窓の外の景色に目をやりました。それでもなんていうか、面白かったです。(小並感)

SFって難しいですよね。スペース(S)・ファンタジー(F)って…と思ったら、Wikipediaによるとサイエンス・フィクション!長い間、間違って覚えていました。なんでも調べてみるものです。
SF

サイエンス・フィクション(英語: Science Fiction、略語:SF、Sci-Fi、エスエフ)は、科学的な空想にもとづいたフィクションの総称。メディアによりSF小説、SF漫画、SF映画、SFアニメなどとも分類される。日本では科学小説、空想科学小説とも訳されている(詳細は呼称を参照)。(引用・抜粋:Wikipedia)

この本ですが、すべてを通してすっきりオチがつくわけではない。宮部先生は頭が良く、設定を細かくこしらえてある。それを理解するまでは少ししんどい、でも、わかりだすと自分の中の想像のスイッチが刺激され、空想にふける事ができる、そんな作品ばかりですね。

ただ注意なのは短編は新作の書下ろしでは無さそうです。こんな僕でも3話ほど目にした作品がありました。宮部先生ファンの方は良く調べて読んでくださいね。ただ何回読んでも少しずつその時の状態によって受ける印象が異なるような作品ばかりと思いますよ。

宮部先生のファンも僕のような知らない人間でも読んで何か心に残るような短編集と思います。一度、手にして損は無い!では一話ずつ感想を。



宮部みゆき『さよならの儀式』感想

「母の法律」

虐待を受ける子供とその親を救済する奇蹟の法律「マザー法」。でも、救いきれないものはある。(引用・抜粋:河出書房新書)

子供は親を選べない、時折ある痛ましい親の子供への虐待事件。機能不全に陥った家族を救済するマザー法という制度がある世界。僕はこんな法律が実際にあると思って調べてしまいました。SFの話ですね。不勉強、極まれり!

本当にこんな法律があれば苦しんでいる子供が一人でも救われるのに、と思いました。子供は国の未来、国が保護したっていい!主人公の女の子は虐待された本当の親と離れ、養子として本当の家族以上の絆を築いているし、幸福に育ちました。それでも、育てのお母さんが亡くなり、マザー法により家族が解体される、そして実の母親に会ってどうのこうのというストーリー。

産みの親より育ての親っていうけれど、本当の母親がむごい、そして主人公の母親への憎しみも苦しい。オチも虚しい。なんだか男には理解しきれない、母親と娘の愛情って深いものがありますよね。それが切ない形で裏切られますけど、それでいてなんだか爽快感もある、世界っていつも不条理だよね、って思わせる作品でした。

主人公の女の子にこれから幸多からん事を。

「戦闘員」

孤独な老人の日常に迫る侵略者の影。覚醒の時が来た。(引用・抜粋:河出書房新書)

この本の中で一番好きな作品でした。おじいさんと男の子っていうのはいつになってもドラマがあるもんですよね。孤独な老人と子供が使命に向けて立ち上がり、世界を救おうとする。不吉な謎の防犯カメラと戦う!続きが読みたい小説でした。長編で書いてほしい!
監視カメラ

ちなみに物語の途中で<キャッスルパレス>という建物のネーミングセンスはどうかっていうくだりがありますが、調べたら実際に都内にその名前を付けた建物がありました。何も知らずに建てたのか、知ってて建てたのか興味深いところですね。まあ、深追いはしませんけど。

このお話、結局、おじいさんと男の子の空想というオチでも良いけど、何か生きがいとか使命とかって人に活力を与えてくれますよね。僕も人生のうち、一度ぐらいは世界を救いたいものです。

「わたしとワタシ」

45歳のわたしの前に、中学生のワタシが現れた。「やっぱり、タイムスリップしちゃってる! 」(引用・抜粋:河出書房新書)

そうそう、昔って時間を行ったり来たりする事をタイムスリップって言っていましたよね。今はタイムリープって聞きなれない言葉を聞きますが、まあ細かい事は置いといて過去の自分が現在にタイムスリップ!

この作品も好きでした。すごく女性目線で、人生これからって中学生のワタシが45歳の私を見て、幻滅したり泣いたり…。面白かったです。年を取っておばさんになった姿に悲しむんですね、口喧嘩するんですね、そこかい!と。僕だったらどんな仕事して年収はどうとか、気になりますね。

でも15歳のボクが今の僕を見たら、やっぱり少しガッカリするだろうな。ごめんよ。主人公の私のように「今の私に満足してる」なんて15歳のボクに今の僕は言えるだろうか?ちょっと難しいかもね。

まあ中学生に戻って人生をやり直したい気持ちもありますが、またあの面倒な青春時代を過ごさなきゃいけないと思うとそれもまた面倒。もっと友人を大事にしたり親孝行はしたいですね。

やっぱり人生やり直させておくれ!!

「さよならの儀式」

長年一緒に暮らしてきたロボットと若い娘の、最後の挨拶。(引用・抜粋:河出書房新書)

この本のタイトルとなった短編ですね。

主人公の男は、愛着を持ったロボットと若い女の最後の別れを見て自分もロボットになれたら、と思う。僕もしんどい、人生はしんどい。理想の人生も注いでもらうはずの愛情も、う~ん、思うようにはならんですね!

この主人公の男のようにロボットのように必要とされて、ロボットのように愛されて、飽きられても、捨てられても何も感じないロボットの方がラクかもしれないよね、実際。

でも人生ってこの虚しさがパッケージされるからこそ、面白いのかもしれませんよね。しんどい気分のほうが勝る日の方が多いけど、まずは健康第一でね、生きていきましょうよ!

ロボットはお酒を飲んだり、大声で笑ったりできないもんね。ロボットも人間もどうせいつかは動かなくなるんだし、その日が来るまでがっつり生きていきましょうね!虚しさも良いじゃないか。

「星に願いを」

妹が体調を崩したのも、駅の無差別殺傷事件も、みんな「おともだち」のせい?(引用・抜粋:河出書房新書)

平凡な町に宇宙船が不時着する。そして子供に乗り移る…全く同じ話はないと思うのですがドラえもんにこんな話があったような、はてなんだったかな?と思いながら読み進めました。あっちこっちに行って調査する宇宙人も大変ならば、いじめられたり、宇宙人が乗り移ったりする妹さんも忙しい、みんな忙しいですね。ヒマに生きるってスキルがいるよね。僕はそのスキルに長けていますけど!

妹を救おうとする主人公のお姉ちゃんにも宇宙人が乗り移って、人の姿が心を映し出すように見えるようになるが私だけ妙に醜い。私はパニックになるけど、夢。そしてまた町に隕石がやってくる、ループ。どうしたいのか。

最後は、主人のお姉ちゃんは少しだけ自分の心に素直になって、少しだけ世界がまともになる。まあ大丈夫、どんな冒険をしようとどんな困難に見舞われようとタフなお母さんがいる。この姉妹は大丈夫。母は強し。宇宙人って大概ロクなことしないよね。

しかし、学校の下駄箱ってなんでこんなに記憶の隅に鮮やかにあるんだろう。

「聖痕」

調査事務所を訪れた依頼人の話によれば—-ネット上で元〈少年A〉は、人間を超えた存在になっていた。(引用・抜粋:河出書房新書)

変な話。ネットの世界って刻々と変化するから小説で切り取るのって難しいですよね。人の語るネットの世界って実は千差万別だなと感じさせられます。

結局のところ、少年Aは黒き救世主と一体になったのか、どこからどこまでが現実だったのか?鉄槌のユダは幻想を見ていたのか、それとも現実にあったのかよくわかりませんし、正直なところはっきりした区別に意味は無さそうですよね。結局、真実がどうかより、本人たちにとってそれがリアリティがあるならそれは現実として機能するという事だと思います。

人は信じたいものを信じて、すがりたいものにすがって、他人は他人、自分は自分って感じで幸せになれるのかな?

毎朝の満員電車以上の現実を見せてくれ?頼む!僕もだれか救っておくれ!

「海神の裔」

明治日本の小さな漁村に、海の向こうから「屍者」のトムさんがやってきた。(引用・抜粋:河出書房新書)

この物語も好き。宮部先生は世界観を作りこむのがうまいですね。主人公は語り部のおばあちゃん、強いなまりで物語を喋っていて一見読みにくそうだったけど、思ったよりサクサク読めました。これも宮部先生の手腕なのでしょうね。

神様になったいわゆるフランケンシュタインのトムさん。「満州」ってキーワードが出るだけでなんだか物語にすごみが出ますよね。本を読んでて今は満州どうなっているのかな?って訪ねたくなりました。今回の物語には全然関係ないけど。

村の伝承や神話が出来る時ってこんな感じなんでしょうね。語られ続ける限り、その人はそこに生きてるんでしょうね。僕もトムさんのように人様のお役に立ちたいものです。強みを生かして頑張ろうと思います!生きていればなんでも出来る!そう信じて頑張ろう!

しかし動物って意識が無くても動いていればそれって動物だよね、生きてるか死んでるかは別として。

「保安官の明日」

パトロール中、保安官の無線が鳴った。「誘拐事件発生です」なぜいつも道を間違ってしまうのか……(引用・抜粋:河出書房新書)

保安官が登場するって事は事件が起こるのかな?と思ったらこの町そのものがとある実験場だったというお話でした。
police

大金持ちの息子が大罪を犯し、罪を犯さない人生を見届けるために何度も罪を犯す前に町ごとリセットして繰り返される人生の実験場。僕も時々考えます。人生をやり直せる場面が来ても、結局似たような人生を送るのではないかと。

結局、同じような人生を辿っても良いと思えるような生き方を選びたいと切に考えています。

ニーチェの永劫回帰ってこんな感じなのでしょうか?不勉強な僕にはちと難しい話ですね。およそ人生を肯定できるそんなタフな精神をもってこの人生の荒野に両足で立って生きていきたいですよね。心、強くあれ!

今回の本の紹介

【書籍名】さよならの儀式
【著者名】宮部みゆき
【出版社】河出書房新社
【出版日】2019年7月30日

宮部先生の長編を読んだことはありませんが、短編でも世界観をしっかり作っておられるので、長編はさぞかし面白いだろうなと思いました。という事で今度は宮部先生の長編にトライしてみようと思いました。

調べてみると『火車』あたりが面白そうですね。今度読んでみます。


僕は『戦闘員』がやっぱり一番好きで続きを書いてほしいなと思いました。じいちゃんと男の子ってやっぱり良いですよね。伝える者と伝えられる者、物語の根幹ですよね。

インターネットでも遺伝子でも情報を伝えるために僕たちって生きてますよね。これからも情報を受け取り、発信したいですね。一緒にブログやってみませんか!というわけ今回はこの辺で。

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